【海外視察レポート】ILA Berlin 2026 および日独宇宙産業交流イベント
2026年6月、クロスユーはドイツ・ベルリンにおいて開催された欧州有数の航空宇宙展示会「ILA Berlin 2026」の視察ならびに、JAXAおよびDLR(ドイツ航空宇宙センター)が主催する日独宇宙産業交流イベントに参加しました。
近年、欧州では宇宙産業と防衛産業の連携強化や、スタートアップを中心とした新たな宇宙ビジネスの創出が進んでいます。また、日本とドイツの宇宙機関や企業間においても、技術交流や産業連携に向けた取り組みが継続的に行われています。本レポートでは、現地で実施された交流イベントやILAの視察を通じて得られた知見についてご紹介します。
1. 日独宇宙産業交流イベントへの参加
「7th German-Japanese Workshop “Usage of Automotive Components in Space Applications”」は、JAXAおよびDLRが共同で開催する日独技術交流の場として実施されました。今回はそのワークショップの関連イベントである、プレイベント、ネットワーキングセッションに参加しました。
自動車産業で利用されている部品や技術を宇宙分野へ応用することをテーマとしたワークショップに先立ち開催されたプレイベントでは、「The Lunar Economy(ルナエコノミー)」をテーマとした講演が行われ、月面開発や将来的な宇宙経済圏の形成に向けた取り組みが紹介されました。
その後のネットワーキングセッションでは、日本およびドイツの宇宙関連企業、研究機関、産業支援機関の関係者との交流が行われました。技術開発のみならず、事業化や国際連携に関する意見交換も活発に行われており、日独双方が宇宙産業の発展に向けて継続的な協力関係を構築していることがうかがえました。
また、会期中にはネットワーキングディナーも開催され、よりカジュアルな環境の中で交流を深める機会となりました。こうした人的ネットワークの形成は、今後の国際連携を推進するうえで重要な基盤となるものと考えられます。




2. ILA Berlin 2026
(1) ILA Berlin 2026の概要
ILA Berlinは1909年に始まった世界有数の航空宇宙展示会であり、現在はドイツ航空宇宙産業連盟(BDLI)とMesse Berlinが主催しています。航空・宇宙・防衛に加え、サプライヤー、スタートアップ、研究機関、政府機関などが参加し、航空宇宙産業のバリューチェーン全体を俯瞰できる場として位置付けられています。
航空機の展示や飛行展示を中心とするエアショーも多い中、ILA BerlinはAviation、Space、Defence、Supplierなどのテーマごとに展示エリアが構成されており、産業・技術・政策を含めた幅広い関係者が集うビジネスイベントとしての側面が強い点が特徴です。
2026年は37か国から765社が出展し、約11万人が来場しました。特にSpace PavilionはESA、DLR、BDLIが共同で運営しており、宇宙機関、企業、研究機関、スタートアップが集まる欧州宇宙産業の主要な交流拠点の一つとなっています。航空・宇宙・防衛の各分野が比較的近い距離で展示されていることから、個別技術だけでなく、産業全体の動向や各分野のつながりを把握しやすい展示会であると感じました。
(2) ILA Berlin 2026で見られたトレンド
今回のILA Berlin 2026で特に印象的だったのは、宇宙産業を取り巻く多様なプレイヤーを一度に把握できる点でした。宇宙ホールには、ESA、DLR、JAXAなどの宇宙機関に加え、OHBをはじめとする大手企業、スタートアップ、研究機関、投資家、産業クラスターなどが集まり、欧州宇宙産業の主要プレイヤーと直接交流できる環境が形成されていました。
また、展示会全体の規模は十分に大きい一方で、宇宙分野が他分野に埋もれてしまうことなく独立した存在感を持っていたことも印象的でした。宇宙ホールでは企業展示だけでなく、ピッチイベントやネットワーキング、ツアー等も行われており、宇宙分野に関心を持つ来場者が効率的に情報収集や交流を行える構成となっていました。
さらに、欧州以外の地域からの出展も見られ、国際的な広がりを感じさせました。 例えば、防衛エリアではウクライナやイスラエルのパビリオンも出展しており、安全保障環境の変化の影響がうかがえました。また、アジア圏の国のプレゼンスもあり、中国からの航空宇宙および製造・素材・機械系の企業の出展や、台湾からは、電子・通信系の技術領域の企業が出展していました。
加えて、CASSINIピッチセッションやStartup Hubでは、宇宙輸送、地球観測、AI、通信、防衛関連技術など幅広い分野のスタートアップが紹介されていました。企業、研究機関、投資家、政府機関が同じ場で交流することで、研究開発から事業化までを支えるエコシステムが形成されていることがうかがえました。ILA Berlinは展示会であると同時に、欧州および各国の宇宙・航空・防衛分野の主要プレイヤーとの接点を構築できる場であり、国際的な産業動向を把握する上で有益な機会であると感じました。




(3) クロスユー特別会員/連携機関との交流
ILA Berlin 2026では、クロスユー特別会員の企業・自治体の出展を確認するとともに、欧州の連携機関との意見交換を実施しました。展示会場では、クロスユー特別会員である茨城県およびElevationSpaceが出展しており、日本の宇宙関連プレイヤーとして来場者に向けた情報発信を行っていました。海外企業や研究機関が多数参加する国際展示会の場において、日本の宇宙産業の取り組みを発信する機会となっていました。


また、会場内ではJAXAやDLRをはじめとする宇宙機関関係者のほか、OHBなどの欧州宇宙企業、大学・研究機関、スタートアップ、投資家、産業支援機関などとの交流機会があり、欧州の宇宙産業エコシステムを構成する多様な関係者と接点を持つことができる点が特徴的でした。


3. 欧州宇宙スタートアップの動向
ILA Berlin 2026では、EUの宇宙スタートアップ支援プログラム「CASSINI」によるピッチセッションや、スタートアップ向け展示エリア「ILA Startup Hub」が設けられていました。宇宙分野のみならず、航空・防衛分野を含めた幅広いスタートアップが参加しており、欧州における宇宙関連産業の最新動向を把握する機会となりました。
(1) CASSINIピッチセッション参加企業
「CASSINI」プログラムは、今年12月1日から4日に開催されるNIHONBASHI SPACE WEEK2026にも参加を表明しています。どんな企業がCASSINIプログラムの対象となっているのか、一例としてILA Berlin 2026での様子をお知らせします。
CASSINIピッチセッションでは、欧州各国の宇宙スタートアップ8社(今回のイベントはドイツ開催なのでドイツのスタートアップが多め)が登壇し、事業内容や技術の紹介を行いました。宇宙輸送、推進系コンポーネント、衛星コンピューティング、通信インフラ、地球観測、AI解析、EOデータ利活用など、宇宙産業のバリューチェーン全体をカバーする企業が集まっていた点が特徴的でした。


| 企業名 | 拠点(国) | サービス・事業概要 | URL |
| Marble Imaging | ドイツ(ブレーメン) | 高解像度地球観測衛星コンステレーションの開発および地理空間データサービスを提供 | https://www.marble-imaging.de |
| Pangea Aerospace | スペイン(バルセロナ) | ロケット向け推進システムおよびAerospikeエンジンを開発 | https://pangeaaerospace.com |
| HyImpulse Technologies GmbH | ドイツ | ハイブリッドロケットによる小型衛星打上げサービスを開発 | https://hyimpulse.de |
| FlyPix AI GmbH | ドイツ | AIを活用した衛星画像・地理空間データ解析プラットフォームを提供 | https://flypix.ai |
| DBSPACE Advanced Solutions GmbH | ドイツ | ロケット推進系向け電動ポンプおよびターボ機械の開発・製造を行う | https://dbspace.eu |
| Decen Space GmbH | ドイツ(ベルリン) | 衛星通信向け分散型地上局ネットワークを開発 | https://decenspace.com |
| Edge Aerospace S.à r.l. | ルクセンブルク | 宇宙機向けオンボードコンピュータ(OBC)、データ処理装置(DPU)、AI搭載コンピューティングシステムを開発 | https://www.edge-aerospace.com |
| SPACE SHIP GmbH | ドイツ(ミュンヘン) | 地球観測データを活用した海運・金融・保険向けリスク分析サービスを提供 | https://space-ship.world |
(2) ILA Startup Hub出展企業
ILA Startup Hubでは、宇宙分野に加え、航空宇宙・防衛産業を支えるスタートアップや技術系企業が多数出展していました。特に、防衛、安全保障、AI、先進材料、製造技術などを扱う企業の存在感が大きく、欧州におけるデュアルユース技術への関心の高さがうかがえました。


| 企業名 | 拠点(国) | サービス・事業概要 | URL |
| Stirweld | ドイツ(ベーブリンゲン) | 摩擦攪拌接合(FSW)技術を活用した接合ソリューションを提供 | https://stirweld.com |
| LINDEMANN Industrie Service GmbH | ドイツ(ヘッペンハイム) | 航空宇宙・防衛分野向け製造・エンジニアリングサービスを提供 | https://www.lindemann-service.de |
| JOT Automation GmbH | フィンランド | 自動化設備・生産システムを開発 | https://www.jotautomation.com |
| Karlsruher Institut für Technologie (KIT) | ドイツ(カールスルーエ) | 航空宇宙分野を含む研究開発および産学連携を推進 | https://www.wbk.kit.edu |
| Aperio Space Technologies GmbH | ドイツ(ディーブルク) | 宇宙状況監視(SSA)および軌道上サービス関連技術を開発 | https://aperiospace.com |
| Cognitive Design Systems SAS | フランス(トゥールーズ) | AIを活用したシステム設計・最適化ソリューションを提供 | https://www.cognitive-design-systems.com |
| UNWARE GmbH | ドイツ(インゴルシュタット) | 航空宇宙・防衛分野向けソフトウェア基盤を開発 | https://unware.technology |
| FJORD7 GmbH | ドイツ(フレンスブルク) | 航空宇宙分野向けエンジニアリングサービスを提供 | https://fjord7.de |
| DEFAINE GmbH | ドイツ(ケムニッツ) | 自律型マイクロUAVを活用した対ドローン・迎撃システムを開発 | (公開サイト未確認) |
| Hyperion Aerial Intelligence GmbH | ドイツ(モンタバウアー) | 航空測量・リモートセンシングサービスを提供 | https://www.aero-survey.com |
| Vabeck GmbH | ドイツ(ベルリン) | 航空宇宙分野向けシステムエンジニアリングおよび技術支援を提供 | https://www.vabeck.com |
| 24 Industries GmbH | ドイツ(ベルリン) | 防衛・航空宇宙向け製品開発およびエンジニアリングを実施 | https://twentyfour.industries |
| FibreCoat GmbH | ドイツ(アーヘン) | 金属被覆繊維を活用した軽量・高機能材料を開発 | https://fibrecoat.de |
| ALTA Ares SAS | フランス(パリ) | 防衛・安全保障分野向けデータ分析および意思決定支援ソリューションを提供 | https://www.altaares.com |
4. 今後に向けて
今回のILA Berlin 2026および日独宇宙産業交流イベントへの参加を通じて、欧州における宇宙・航空・防衛分野の最新動向や、スタートアップエコシステムに関する知見を得ることができました。エアショーらしい航空機などのデモフライトはもちろん、宇宙ホールやサプライヤーのホールがしっかりと確保されており、ドイツを中心とした航空宇宙概観できるほど良いサイズ感のイベントでした。次回の開催は2028年5月17日から21日を予定しているそうです。皆さんもぜひ、ご参加をご検討ください。
クロスユーでは今後も、欧州の研究機関、企業、スタートアップとのネットワーク構築や情報交換を継続し、日本企業との国際連携や事業創出につながる機会の創出を目指していきます。
また、今回の訪問で得られた情報や現地企業とのネットワークを活用し、会員企業の皆様への情報提供や海外連携支援に取り組んでまいります。欧州の宇宙・航空・防衛分野の企業やスタートアップとの連携にご関心のある方は、クロスユー事業3課(info@crossu.org)までお問い合わせください。
