2025年11月18日~20日まで、欧州最大級の宇宙産業B2B展示会「Space Tech Expo Europe 2025」がドイツ・ブレーメンで開催されました。クロスユーでは本展示会を視察し、製造・部材・試験といったサプライチェーンを中心に、欧州宇宙産業の最新動向と産業構造の現状確認を行いました。
また、EUのスタートアップ支援プログラム「CASSINI」を通じて形成されるエコシステムの実態にも着目し、欧州における宇宙産業の現在地と今後の展開について、本レポートで報告します。

1. 概要:欧州宇宙産業の実務が集積するB2B展示会

「Space Tech Expo Europe」は、欧州宇宙産業のサプライチェーンを中心に構成された、欧州最大級のB2B展示会です。
 
 開催地であるドイツ・ブレーメンは、Airbus Defence & Spaceの主要製造拠点OHB本社が所在する、欧州有数の宇宙産業都市です。空港にはISS(国際宇宙ステーション)の模型が展示されており、街として宇宙産業を中核に据えていることが随所に感じられました。会場のMesse Bremenは空港から車で約30分とアクセスも良く、産業拠点と展示会が地続きで結びついている印象を受けました。

 今回で9回目の開催となる本展示会は、出展社数が950社を超え、来場者の多くは調達・購買・技術評価を担う実務担当者で、商談率の高い展示会といわれています。
本展示会の大きな特徴は、「実際に使われる技術・部材・サービスを、その場で選定・比較する場」として機能している点にあります。会場では、製品仕様、価格帯、量産可否、納期といった具体的な条件を前提とした多数の商談が当たり前のように行われており、華やかな宇宙イベントというよりも、欧州製造業の調達市場を可視化された場が広がっていました。


2. 出展者構成:欧州のサプライチェーンに携わる企業が集結

展示会公式の出展者リストを俯瞰すると、以下の分野が特に多くを占めていました。

  • ・製造・加工(Manufacturing)
  • ・サブシステム/システム(Subsystem / Systems)
  • ・光学・機械・電子部品(Optical / Mechanical / Electronic Components)
  • ・試験・測定・評価(Test / Measurement)

この構成から、本展示会の重心が、ロケットや衛星などの完成品ではなく、それを支えるサプライチェーンに強く置かれていることが読み取れます。素材、部品、加工技術、試験サービスといった分野が主役であり、欧州宇宙産業が「研究開発」から「量産・運用フェーズ」へと本格的に移行していることを実感させる内容でした。

また、ESA(欧州宇宙機関)はSME(中小企業)・スタートアップとの共同ブースを設置していました。大企業の調達ニーズと、中小企業・スタートアップが持つ専門技術を結びつける産業ハブとしての役割がブース内では設計されていました。展示会全体を通じて、欧州では宇宙産業がすでに「特別な先端分野」ではなく、製造業の一分野として組み込まれていることが強く印象に残りました。


3. EU「CASSINI」プログラム:宇宙スタートアップ支援の中核施策

3-1. CASSINIプログラムの概要

会期中、クロスユーはEUの宇宙スタートアップ支援プログラム「CASSINI(Competitive Space Start-ups for Innovation)」の関連イベントに複数参加しました。

CASSINIは、欧州委員会(European Commission)が2021年に立ち上げた、欧州宇宙ビジネスエコシステム全体の競争力強化を目的とした包括的支援プログラムです。対象は、GalileoやCopernicusといったEU独自の衛星システムのデータを活用するダウンストリーム企業から、ロケット・衛星製造などのアップストリーム企業まで幅広く、宇宙関連スタートアップ・中小企業の成長ライフサイクル全体を支援しています。

同プログラムは欧州投資基金(EIF)と連携し、宇宙分野に投資するVC向けに約10億ユーロ規模の投資枠を設定しています。また、

  • ・学生・異業種向けのハッカソン
  • ・初期段階向けのメンタリング
  • ・成長期企業向けのビジネスアクセラレーション

といったように、企業の成長段階に応じた支援メニューが体系的に用意されています。
CASSINIに選抜されることは、技術力とビジネスモデルの両面において、EU当局および専門家から高い評価を受けた証であり、欧州域内では高い信用力を持つ仕組みとして機能しています。


3-2. CASSINI Business Accelerator(Batch 5)参加企業

Space Tech Expo会期中には、CASSINIプログラムの中核施策である「CASSINI Business Accelerator」Batch 5のデモデーが開催されました。登壇した企業は、半年間にわたる集中支援を受けた、欧州の次世代を担う宇宙スタートアップ13社です。
分野は、宇宙状況把握(SSA)、軌道上サービス、地球観測、通信、物流、気候変動対応、観光・地方創生など多岐にわたり、宇宙技術が非宇宙分野と自然に結びつき始めている現状が強く印象づけられました。宇宙を「目的」とするのではなく、「社会課題解決や産業高度化のためのインフラ」として捉える姿勢が、欧州スタートアップに共通して見られました。

企業名 拠点(国) サービス・事業概要 URL
3L Robotics チェコ 産業物流向けドローン配送ソリューション。
完全自動化されたエンドツーエンド配送システムを提供し、ラストワンマイルや工場内物流に特化。
公式サイト
ATLAR Innovation ポルトガル 宇宙状況把握(SSA)ソリューション。
レーダーと光学を組み合わせ、宇宙デブリや資産を常時監視・追跡。
公式サイト
ATMOS Space Cargo ドイツ 再利用可能なリターンカプセル「Phoenix」による軌道上からの物資回収サービス。 公式サイト
Azimut Space ドイツ 宇宙機向け熱制御ハードウェア。
サーマルストラップ、ペルチェ素子、ラジエーターなどを提供。
公式サイト
Druiter ギリシャ AIと衛星データを活用した地方・観光向けルート計画アプリ。 公式サイト
Celtonn アイルランド 宇宙・防衛向けミリ波(W/Vバンド)対応の高周波通信システム。 公式サイト
Everimpact フランス 衛星×地上センサー×AIによる温室効果ガス(GHG)測定・認証プラットフォーム。 公式サイト
involve イタリア 成層圏バルーンを用いた低コスト・高解像度の地球観測・監視サービス。 公式サイト
isaware フィンランド 太陽嵐による重要インフラへの影響を監視・警告する宇宙天気ソリューション。 公式サイト
LMO ルクセンブルク/イギリス 軌道上サービス・防衛向けのEdge-AIおよびオンボード認識システム。 公式サイト
needronix スロバキア CubeSat向け高信頼性コンポーネント(センサー、送信機、航法系)。 公式サイト
Neuraspace ポルトガル AIを活用した宇宙交通管理(STM)・衝突回避支援SaaS。 公式サイト
SatRev ポーランド ナノ衛星の開発・製造およびリアルタイム地球観測データ提供。 公式サイト

4. 今後に向けて

クロスユーでは今後、CASSINIをはじめとする欧州の支援プログラムやスタートアップエコシステムとの情報交換、マッチング支援などを通じて、日本企業と欧州宇宙スタートアップの具体的な連携機会創出を進めていく予定です。
CASSINI参加企業の資料やコンタクトに関心のある方は、クロスユー事業3課(info@crossu.org)までお問い合わせください。